ORIGAMI発。形状によって味わいの感じ方が変わるフレーバーカップが誕生。ワインのように楽しむ、コーヒーの新しいかたち
コーヒーカップの概念を変える
ORIGAMIというブランドが誕生したころは、日本製のエスプレッソ向けカップがほとんどなく、世界で出回っているカップの作りも今と比べてまだまだ甘いものが多いという印象でした。でも、ここ2〜3年でコーヒーの状況は変わっていて、世界中でドリップコーヒーがどんどん飲まれるようになってきたんですよね。すると、「エチオピアだったらこういうテイスト」「ケニアだったらこう」「ブラジルだったらこう」という感じで、産地や品種の特性、つまりテイストを楽しむということも浸透してきて、コーヒーの楽しみ方について「ワインに似ている」という表現をすることも多くなってきました。
ワイングラスでは香りや味わいとグラスの形状を結びつける考えがもはや当たり前になっていますが、コーヒーを飲むカップには、まだそういったものがなかったんですよね。ワインでいえば、リーデルさん(※)がワイングラスの概念を変えました。それまでは、みんな普通のグラスでワインを飲んでいたわけです。コーヒー界ではORIGAMIがリーディングヒッターとして新しいカップの価値を世界に提案していくべきだと思い、今回のフレーバーカップが誕生しました。
※オーストリアのワイングラスメーカー。同じワインでも異なる形状のグラスで飲むと香りや味わいが変わる点に着目し、世界で初めてブドウの品種ごとに合わせた形状のグラスを開発した。
五感に関わる要素にこだわり抜き生まれた、新しい価値
「アロマ」「バレル」「ピノ」の3つの形状は、ワイングラスでもよく使われる形状のものからヒントを得て作りました。
開発中は、どうしても自分の知識だけでは足りないので、ソムリエさんに話を聞くなどしながらテイストのとり方を学びつつ、そのなかで自分なりのセオリーを見出しながら、これらの形にたどり着きました。それぞれ、とても良いかたちで違いを出せていると思います。
まず、形の違いによって香りや味の感じ方が変わるのは、顎の角度が変わるからなんです。通常は、フレーバーカップというと鼻を覆う構造に気を配ることが多いのですが、この3種のカップでは、コーヒーを口に流しこむときの顎の上がり具合がカギになっています。
顎の角度が変われば、コーヒーが口に入ったときに舌のどの部分に触れるかが変わるんです。舌は部位によって強く感じる味覚が違うとされていて、ワイングラスもこの考えをもとに設計されているものが多くあります。
3種のフレーバカップでは、バレル<ピノ<アロマという順で、顎が高く上がるようになっています。
左からバレル、ピノ、アロマ
まず、バレルはあまり顎を上げずに飲めるので、舌先からコーヒーが流れ込みます。そのため、甘さをより感じることができるようになっており、まろやかな味わいを楽しめます。
ピノは舌の真ん中あたりに流れ込みやすく、口のなかいっぱいにコーヒーが広がってくれるので、甘さや酸味、苦味などのいろいろな味をバランスよく捉えることができ、より複雑な風味を味わえます。バランスよく味わいたいときにおすすめのカップです。
アロマは、顎をかなり上げないと口の中にコーヒーが流れ込まず、舌の奥に当たってから横に流れていきます。そのため、酸味を味わうのに向いています。果実感をより強く感じられるカップです。
こちらは顎が上がらない通常のカップで飲んだ場合
アロマを使うと、かなり顎が上がることがわかります
味わいは五感で感じるものなので、色もやはり影響してきます。
暖色系のカップで飲むとより果実感を感じ、ダーク系のカップで飲むと苦味を感じやすくなるとも言われています。
今回は、味わいの違いをニュートラルに感じてもらうことができるよう、シンプルにホワイトとブラックの2色にしました。
そうですね。ハンドルが付いていないので温度も感じやすくなっていますし、カップの重さもテイストに影響するので、こちらもできるだけニュートラルな状態になるよう、重すぎず軽すぎない適度な重量になっていますし…
本当に今回のフレーバーカップの特徴として伝えたいのは、我々が五感にかかわる様々な要素を計算したうえで実現した形状だということですね。これまで体験したことのない飲み方を楽しんでいただけるはずです。
現状では、日本よりも海外の方のほうが興味を持ってくれている実感がありますね。理由はいくつかあって、たとえば日本はコーヒーの歴史がある意味長いわけです。
日本では当たり前のようにドリップコーヒーが飲まれてきていて、スーパーで購入したものを自宅で淹れる人も多くいます。浸透しているからこそ、無頓着になっている部分があるし、どうしても昔からの固定概念のなかで動いている部分も残っているので、新しい風が入ってきてもなかなか動きにくいという現状があるんです。
一方で海外では新しく、エスプレッソ文化が先に走っているところが多いので、あとからドリップ文化が入ってきたことで注目されているというのも大きいんじゃないでしょうか。コーヒーに対して求めるものが違うんですよね。
海外では、スペシャルなコーヒーをハンドドリップして飲むというスタイルなんです。
それと、欧米ではマグカップでブラックコーヒーをガブガブ飲むというスタイルが主流だったのですが、ここ数年で“良いコーヒーをちょっとずつ味わう”という流れが生まれています。そこに、今回のカップの形状とサイズ感がフィットしたというのもあると思います。
PROFILE
TRUNK COFFEE
オーナー兼バリスタ 鈴木康夫さん
愛知県名古屋市東区泉2-28-24 東和高岳ビル1F
TEL052-325-7662
http://www.trunkcoffee.com/
https://www.instagram.com/trunkcoffee/
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